●綿業会館
綿業会館 外観
イタリア・ルネサンス様式の外観を持つ綿業会館は東洋紡績専務取締役・故岡常夫氏の遺言による100万円の寄付と関係業界から集めた50万円(計150万円。現在の貨幣価値で約75億円)をもとに建設されました。
当初から国内だけでなく各国からの来賓が来ることを想定し、会員や来賓の好みに応じて、好きな部屋を選んでもらいたいという配慮から、さまざまな様式の部屋が用意されています。

(玄関ホール)
綿業会館 玄関ホール
ホールは外観と同じくイタリア・ルネサンス様式。床は多数、穴が空いているのが特徴のトラバーチンの大理石が使われています。中央にどどーんと鎮座しているのが、岡常夫氏の銅像ですが、戦時中の金属供出でこの銅像やシャンデリア、鉄柵などはすべて持っていかれてしまいました。ということで像と鉄柵は復元したもの、シャンデリアは当時とは違うデザインだそうです。
なお、こちらの建物は昭和6年に建てられていますが、最初から冷暖房設備のため、壁や天井の中に太いダクトを通してあります。

綿業会館 エレベーター綿業会館 郵便ポストエレベーター脇にあった郵便ポスト。
この手のものは大きいレトロビルにしばしば見られるもので、東京だと明治生命館などにもあります。
いずれも今は使われていません。




(会員食堂)
綿業会館 社員食堂その1

綿業会館 社員食堂その2食堂に入るとまず天井の豪華さに圧倒されます。
設計者の渡辺節は、この建物の設計にあたりヨーロッパやアメリカの視察をしており、その当時のアメリカで流行したデザインで、ミューラル・デコレーションなるものだそう。
ミューラルというのは英語で「壁画」。これは壁だけでなく天井も含む意味合いで、この部屋では壁にはなく、天井に装飾があります。
壁は大理石に見えますが、食堂で皿や食器の音を考慮し、木造の吸音材が使われています。
ちょっと叩くとプラスチックのような張りぼてのような軽い音がしました。

綿業会館 社員食堂その3玄関ホール側はアーチ窓になっていて、すりガラスのデザインが素敵です。
照明は裸電球を逆さに取り付けたもので、これなら庶民でもすぐ作れそう。。。
ところで、綿業会館の見学は毎月第四土曜日のみで、食事つきと見学のみの2タイプ設けられていますが、見学のみで参加しても、後日使える食事予約券が希望者にもらえます(但し平日のみ可で、2ヶ月くらいの期限つき)。

(談話室)
綿業会館 談話室その1


綿業会館 談話室その4

綿業会館 談話室その2綿業会館というと真っ先に挙げられるのがこの談話室であり、部屋奥のタイルタペストリー。高さ8mある壁の一角・縦6m、横4mに京都の泉涌寺で焼かれたタイルが貼り付けられています。これは設計者の渡辺節が1枚1枚並べる位置を決めたと言います。タイルは種類としてはわずか5パターンですが、釉薬をかけて焼かれたため、さまざまな色合いを醸し出し、複雑な陰影で部屋を独特なものにしています。その隣にある竹のような暖炉も存在感があります。雅楽の笙のようにも見えました。

十文字にワイヤの入ったフランス製の防火ガラス。昭和20年の大阪大空襲にも耐え抜き、良く見ると溶けかかった部分もあるようです(後で知ったので気付きませんでした。。。)。



綿業会館 談話室その3綿業会館 談話室その5タイルタペストリーの反対側にはかつての図書室(今は図書室としては使ってないそうです)へと続く階段。(支えがない)空中階段、しかも、斜めに取り付けてあって、角には隙間が! 相当な技術です。
隙間はともかく、イギリスルネサンス初期のジャコビアン・スタイルだったり、空中階段だったりで、旧岩崎邸を思い出します。と言っても、岩崎邸とこの談話室、解説なかったら同じジャコビアンって気付かない、というか、言われても同じかどうか感覚的にはピンとこない・・・。ここでの説明では「直線的な線が特徴」とのことで、確かにこの部屋はちょっと硬い感じ。でも岩崎邸は直線的って感じじゃないような。ジャコビアンもいろいろなのかしら。

もう一つ有名なのは、国際連盟満州事変調査団(リットン調査団)が訪れ、大阪財界代表らとここで会談ということ。調査団のリットン伯爵はイギリス人。この部屋を見てどう思ったでしょうね。

(貴賓室)
綿業会館 貴賓室その1窓や壁は直線的、天井と家具などは曲線という対比のクイーン・アン・スタイルの特別室。家具の足はすべて猫足のほか、直線でもいいところも曲線で作ってあるという、ジャコビアンと打って変わって分かりやすい様式のお部屋です。

戦前は皇室専用で、実際、高松宮家がおとずれています。
皇室専用だったからか??ここのシャンデリアは供出されてなくてオリジナルが残っています。戦後、進駐軍が使っていたけれども、お願いしてそのままの形で使ってもらったそう。その代わり、違うフロアは少しペンキを塗ったり、ベッドを入れたりと、よく聞くGHQのやりたい放題状態。
床は寄木で一番外は黒檀で模様付け、天井は漆喰で意匠はざくろ。子沢山、栄えるようという意味が込められています。

綿業会館 貴賓室その2 綿業会館 貴賓室その3

(会議室)
綿業会館 会議室その1現在も倶楽部の理事会などが開かれる会議室は、フランスのアンピールスタイル(アンピール=Empire 皇帝ナポレオンの帝政時代に流行したスタイル)。
白を基調とし、椅子にはナポレオンが好んだ赤色を用いています。
ここは別名、「鏡の間」と呼ばれ、お隣、貴賓室の扉を閉めると鏡が向かい合わせになっています。
鏡のまわりはパッと見、木材のように見えますが、木材に似せた茶色の大理石で作られています。
食堂のコルク壁が一見大理石に見えるのとちょうど逆ですね(芸が細かいのう・・・)。

綿業会館 会議室その2

(大会場)
綿業会館 大会場本館7階(屋上階)にある大会場へはエレベーターで移動したのですが、同乗の大阪のおばちゃんが、「次見るのはたいしたことあらへんで。いや、立派ねんけど、今まで見たもんに比べたら劣るわ」って。
で、見たら、ん~確かに。劣るわけやないけど、あっさり明るいやん。それってどうしても、軽く見えますわ。
案内書にも「アダム・スタイルと呼ばれる軽快で・・・」ってあるしね。
個人的にはミュシャのポスターの背景に合いそうなデザインでした。
柱型を並べた壁のデザインが特徴です。




(グリル)
綿業会館 グリルその1 綿業会館 グリルその2
本館地下のグリル。オリジナルは青いタイル張りの壁のあたりだそう。奥の壁にちょこちょこっと見えるタイルは象嵌彫りの要領で、壁をくりぬいてはめ込んであります。

(建築データ)
竣工 :1931年(昭和6年)
所在地:大阪市中央区備後町2-5-8
設計 :渡辺節(図面担当・村野藤吾)
施工 :清水組 
構造 :鉄骨鉄筋コンクリート造、地上7階、地下1階
備考 :平成15年重要文化財

(今日のおまけ)
京まんだら(上) (講談社文庫 せ 1-6)京まんだら(上) (講談社文庫 せ 1-6)
(1976/05/26)
瀬戸内 晴美

商品詳細を見る
談話室の壁を飾ったタイルは泉涌寺のものでした。
泉涌寺の最寄り駅は東福寺駅です。紅葉で有名な東福寺と比べ、少々マイナーではありますが、泉涌寺も広大な敷地を要するお寺で、瀬戸内寂聴の著作に詳細な描写がある楊貴妃観音などがあります。
その周辺にはたくさんの清水焼の窯元が点在しています。綿業会館のタイルタペストリーを手がけたのは、そのうちのどこかなのでしょう。
11月には大陶器市やスタンプラリーを実施しており、その間はセールも行っていますので、一般客も気軽に購入できます。ちなみに泉涌寺山内の今熊野観音寺は穴場の紅葉スポット。

(参考資料)
日本の近代化遺産 第5巻 大いなる商都・民(みん)の力 ~大阪の近代化遺産~ [DVD]日本の近代化遺産 第5巻 大いなる商都・民(みん)の力 ~大阪の近代化遺産~ [DVD]
(2006/01/28)
藤森照信

商品詳細を見る
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://kindaikenchikurest.blog14.fc2.com/tb.php/165-979ae4e9